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建物の耐用年数 ― 舞鶴 赤レンガ倉庫群

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舞鶴市役所のすぐ横、最近倉庫周辺が綺麗に整備されたのでしょうか、良い雰囲気になっています。

有名観光地にはなっていないので、イベントなどがない平日は人も少ないようです。

たくさんある赤レンガの建物の中で旧日本海軍の魚雷庫だったという赤レンガ博物館は、リベット接合と圧延鋼材を用いた日本最古の鉄骨造の一つだそうです。

 

 

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 1903年竣工で、製鋼技術が成熟していない当時は、カーネギーホールで有名なアメリカのカーネギー製鉄会社の鋼材を使用しているとのこと。

110年経過した建物を再利用していることは素晴らしいことですが、ここでふと気になることがあります。

 

 

   

 

gk1.jpg 一般に耐用年数が長いといわれる鉄筋コンクリート造で日本最古のものは長崎の軍艦島にあり、1916年竣工です。

 

鉱員社宅として建てられた築97年の7階建てアパートで、ご存知の通り現在は写真のような廃墟となり崩壊寸前です。

使用する材料や技術の問題、1970年代からメンテナンスをされていないなど、単純に比較はできませんが、これも事実として認識しておくことは大切だと思います。

 

現代の技術で建築される鉄やコンクリートの建物の耐用年数は、前述の古い建物より長くなっているとは思いますが、結果がわかるのはまだまだ先の話です。

 

 

 

一方、木造はどうかと言いますと、普通の民家でも100年超えのものは数え切れないほど存在します。

構造材は、放っておけばすぐに腐ってしまう「木」ですが、乾燥状態であれば経年劣化は少ないのです。

大断面の木材を使用する寺院建築ならば維持管理も行き届き、さらに寿命が長いことはよく知られていますね。

でも良いことばかりではありません。木の弱点は燃えることです。

ひとたび火事になれば木造の建物は無抵抗です。

 

 

さぁ、では建物の構造は何がベストなのでしょうか?

 

建物が建つ環境や目的、感性そして予算によって建築構造の「最善」は変わりますので、よーく考えて判断してください、というのが結論です。

工法でも素材でも、良いところがあれば必ず弱点があるということをお忘れにならないように。

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