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雫庵(しずくあん) 京都市山科区 part 1

高齢の母が住む、平屋の庵(いおり)です。
ガラス屋根をつたって落ちる雨垂れは見飽きずそして楽しく、雫庵(しずくあん)と名づけました。

 

 

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建物に降った雨はすべて大地を潤し、木々の命をはぐくみ空に還ります。
雨の日にはそんな自然のサイクルを感じ、晴れた日は太陽の恩恵に与る。 夏には風を誘い込み、屋根の熱気を放出し、冬には暖まった室内の空気を逃しません。
建築的な工夫をこらして、設備は最小限にとどめます。

 

夏のしつらい。簾と風鈴で涼を採ります。

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およそ1m×2mのタタミベッド。タタミの下はキャスターのついた大きな引出しです。
上部はベッドを踏み台にして使える天井収納です。
布団にもぐり、夜風を誘い込む小窓の横のスイッチで灯りを消して、・・・おやすみ・・・。

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わずか3畳ほどの寝室から茶の間を望む。部屋の天井は、ほとんど天窓が占めています。
とても明るく、まるで屋外にいるようです。でも遮光スクリーンを下ろすと光は入りません。
間仕切りの木製建具は上吊り式で、床には敷居やレールはありません。
(スガツネ FD30-H) 建具は自動でゆっくり引き込まれて閉まります。既製品にはよくある仕組みですが、一般にはなかなか入手できませんでした。こんな引戸金物を待っていました!

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玄関の建具を開けたところ。(左下)
床は450mm角 イタリア製タイル 一枚475円也。薄い色の土のような感じです。
外壁は火山灰が原料の「そとん壁」で、ブラシを使って縦に細かなラインを入れています。
グレーの四角いものは、LEDの足元照明です。

スチールで製作し、亜鉛めっきを施した縦格子と庇。(右下)
玄関建具も縦のラインを意識したデザインで、ヒバ材に「ウッドロングエコ」という木材の経年変化(シルバーグレー)に似たテクスチャーを出す塗料を塗りました。
取手はロングタイプの中では安価ながら良いデザインと質感があります。(UNION T61)
建具の下枠には、扉が閉まると床との隙間を埋めてくれる金物(BEST スーパータイト)が仕込んであります。バリアフリーの開き戸には欠かせません。

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建具の縦枠は柱に隠れて見えません。上下の框も見えないようにして建具の存在を消します。(右下)

縦枠が隠れていると建具を引き出せないので、柱に手繰りを設けて引手に手が届くようにします。(左下)
格好良く見せようとすると、何かと工夫が必要になります。でもこれがまた面白い。

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はめ殺しガラスは枠を付けないで、コーキングのみで仕上げます。

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縁無しの畳とヒノキの無垢床板。
ゴロッと寝るときは、やはり畳がよろしいですね。
ヒノキは上小節で発注しましたが、ほとんど無地に近いものを持ってきていただきました。
吉野中央木材さんに感謝。いつもありがとうございます。

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メラミンを貼った可動式のテーブルは、部屋を大きく使いたいときのため 斜めのガラスまで移動できるように こんな形になりました。

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玄関、廊下、リビング天井の一部を黒く塗りました。現場を見てからの思いつきです。低い天井を意識させないため、というのが後付けの理由。本当は、ただ黒くしたかったのです。
リビングは、黒い天井の上に63Wの蛍光灯間接照明が4本仕込んであります。

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この平屋の建物のコンセプトのひとつは雨垂れを楽しむことで、当初の設計に雨樋はありませんでした。ところが、です。
今年の豪雨で軒先は滝のようになり、出入りもままならず玄関先のみ雨樋をつけました。
軒樋は半丸で支持金物は見せない納まり。縦樋との取り合いも不恰好な飾り枡ではなく漏斗状のシンプルなデザイン。発売当初から使わせていただいている、タニタの優れものです。色も良し。

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ガラス庇は1999年に大津 千野の家で設計して以来これで4例目。軒の出を深くしても採光、陽射しの恩恵に与ることができる工夫。

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